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Symposium "Linking Cloth-Clothing Globally: 18-20th Century Mapping"
(2015年7月31日~8月1日 東京大学東洋文化研究所)

20150731imgPoster(PDF 222KB)
Program(PDF 54KB)

Session I: Global Circulations of "Cheaper" Cloth-Clothing in the 18th Century

Giorgio Riello, University of Warwick, UK
From India to the World: Cotton Textiles' Global Reach in the Eighteenth Century
Izumi Takeda, Wako University, Japan 竹田泉(和光大学)
Positioning the Irish coarse linens in an eighteenth-century global context
Anne McCants, Massachusetts Institute of Technology, US
Textile Meanings in a Global Capital: Fabric and Fashion in 18th c. Amsterdam
Miki Sugiura, Hosei University, Japan 杉浦未樹(法政大学)
Garments for sail and textiles for slaves: Creation of Cheaper Cloth and Clothing in Cape Town in the 18th century

Session II: Mapping "the South" and "the North"

Renate Pieper, University of Graz, Austria
Changing dress codes in the Spanish Empire during the 18th century
Takeshi Fushimi, Keio University, Japan 伏見岳志(慶應義塾大学)
Composition of Textile Products Traded in Late-Colonial Mexico: Limited Consumption of the Spanish Fashion
Masachika Shiotani, Tohoku University, Japan 塩谷昌史(東北大学)
The cotton “Upland” which connected Russia and America in 19th century
Irina Potkina, Russian Academy of Sciences, Russia
The Russian Singer Company: business strategy and partners
Takako Morinaga, Ritsumeikan University, Japan 森永貴子(立命館大学)
The Russian fur trade and the global market focusing on the Kyahkta trade and European exports in the 19th century

Session III: Mediating and Uniforming the Global Circulation

Michael North, University of Greifswald, Germany
Junko Aono, Kyushu University 青野純子(九州大学)
Book Discussion "Mediating Netherlandish Art and Material Culture in Asia" (North / DaCosta Kaufmann eds, 2014): Mediating European Art thorugh Company Channels in Asia
Beverly Lemire, Alberta University, Canada
Shirts & Snowshoes: Material Culture & European Imperial Agendas in an Early Globalizing Era, c. 1660-1800
Nao Tsunoda, Japan Society for the Promotion of Science, Japan 角田奈歩(日本学術振興会)
System of Creating Fashion: Parisian Fashion Industry in the 18th and 19th Centuries
Emi Goto, the University of Tokyo, Japan 後藤絵美(東京大学)
Europeanization or Globalization? A Question of Fashion in Nineteenth- and Twentieth-Century Asia
Hissako Anjo, Otemae University, Japan 安城寿子(大手前大学)
"Ready to Wear" before the Age of the Ready to Wear: the Development of the Methods of Buying a Men's Suit in Early 20th Century Japan

Session IV: "Made in Japan" Products in Global Context

Naoko Inoue, Tokyo International University, Japan 井上直子(東京国際大学)
Emergence of Japanese Silk Waste Industry in Global and Domestic Context: from Late 19th Century to Early 20th Century
Keiko Suzuki, Ritsumeikan University, Japan 鈴木桂子(立命館大学)
Kimono Culture in Twentieth-Century Global Circulation
Jeremy Prestholdt, University of California, San Diego, US
Fashion between empires: African consumers, Japanese industry, and British economic power in the interwar period

活動報告(杉浦未樹)

7月31日と8月1日の二日間にわたって"Linking Cloth-Clothing Globally: 18th-20th Century Mapping"を東洋文化研究所で開催した。
京都で翌週ひらかれた世界経済史会議にあわせて、たくさんの海外研究者に参加いただき、盛況な会となった。
冒頭に、会議全体の「布と衣の廉価化」を扱うというテーマに即し、織物の世界的な流通研究の第一人者であるジョルジオ・リエロ氏が、「奢侈品 Luxury」を分類しなおし、地域によってどの奢侈品タイプが原動力になっていたかが違うと論じ、インド綿布はじめ各繊維関連製品についても単純に奢侈品と位置づけることなく、奢侈品の枠組みそのものを考える必要があると注意喚起した。
続いて、「18世紀において社会下層部へあらたに普及した、廉価な布・衣」というテーマで、三つの発表が続いた。まず、竹田泉氏がドイツに端を発する、アイルランドにおける18世紀の低級麻織物業の成立と発展をアメリカの奴隷布市場との関わりから位置づけた。次に、アン・マッカント氏は18世紀半ばのアムステルダムにおける低所得層のインベントリーの調査結果を報告し、庶民にとっての日常品としての織物や衣類のなかで、どのように各地の織物が使われていたのかを描きだした。さらに杉浦未樹が、18世紀のケープタウンにおいて、奴隷用の衣類がどのような手段を使って一段安いものとして作り上げられたのか、その仕組みを論じた。
一日目後半のセッションは、18-19世紀の織物の世界的な流通を論じるためには非常に重要でありながら、組み入れられることの少ない地域である「ラテンアメリカ(とくにメキシコ)」と「ロシア」を集中的に論じるものであった。メキシコについて、レナーテ・ピーパー氏が、18世紀のカスタ絵画において、当時の人種などで複雑に細分化された社会層が着用衣装でも細かく識別化されていることの真偽を、18世紀前半から半ばのインベントリーや所持品記録からさまざまな階層の着用品から検討した。そして、着用品のなかに、実際メキシコ産を筆頭に、スペイン本国やそれと取引のある北西ヨーロッパ地域、およびインド各地・東南アジア産の織物が混在しており、カスタ絵画に示されたような多様なスタイルの創出がけっして不可能ではないことを示した。一方、伏見岳氏は同時期の都市部の衣類品売りの在庫記録を検討し、流通の立場からの織物文化の特徴を述べ、ピーパー氏の論点とも共通して19世紀間近にイギリス布の影響が突如としてあらわれる等の転換を指摘した。ロシアについては、塩谷昌史氏がアメリカ綿の導入を短繊維から長繊維への原綿主体種の転換、そして、森永貴子氏が17-19世紀後半のロシアの毛皮交易が中欧・西欧・中国・アメリカとの関わりをとりあげ、ともに長期的かつ巨視的な立場からの位置づけが行われた。一方、イリーナ・ポトキナ氏は、その導入が各地で転換点を作り出すシンガーミシンのロシアでの成功著しい普及を、企業史の観点を取り入れつつ詳細に論じた。
二日目の前半には、モノの多方向への伝播・普及(Diffusion)そしてその流通・循環(Circulation)を論じている枠組みとして、Mediation(仲介)とUniformity(規準化・汎用化)を取り上げる趣旨がまず説明された。そして、最初に最近東インド会社によるオランダ美術品やそのほかの仲介を論じたマイケル・ノース氏が、仲介の概念について史実に即して整理され、それに対して青野純子氏が、仲介によって生まれた新しい価値をどのように位置付けるか等、コメントし、全体での討論がなされた。次にビヴァリー・ルミア氏が、シャツと雪靴(かんじき)を素材に、ひとつのモノの普及に諸勢力の思惑や価値観が絡み合うことを如実に描き出した。 続いて角田奈歩氏が、パリファッションのスタイルがどのような段階を得て汎用化されていくのかのモデルを示した。後藤絵美氏は、日本女性の「アッパッパ」とイラン女性の「麦わら帽子」の着用を例として、「洋装化」と呼ばれる現象が、ヨーロッパやアメリカの衣服スタイルのストレートな取り込みばかりではないことを示した。さらに安城寿子氏が、日本において当初成立した洋装背広既製服とは、古着か粗悪な縫製の低級品であったことを指摘し、そこから1920年代から30年代には注文服に関わる生産・流通システムが、技術向上の背広使用者の拡大と併設する形で、品質の優れた「高級既製背広(レデーメード)」のジャンルを成立せしめていたことを詳細に論じた。
最後のセッションは、19世紀末から20世紀半ばにかけての日本の繊維にかかわる製品を世界的な視野からみようという目的で行われた。まず井上直子氏が日本の絹屑糸産業の成立と発展について、スイスやオーストリア等からの技術導入とフランスとの市場競合を述べたあと、それが国内で銘仙の爆発的な内需喚起に直結した成功例であることを示した。次の鈴木桂子氏の報告は、20世紀のGI(兵士)や観光客等、自文化を国際的に循環させる集団によって、数多くのキモノ文化の派生商品が日本―アメリカ―ハワイ―他国の連環のなかで生み出され、広がっていったことを明らかにした。最後にジェレミー・プレストホールド氏が、1920年代から40年代にかけて東アフリカ諸国において日本産捺染綿布の需要が圧倒的だったことについて、競合相手のイギリス側の視点から、国際連環の諸相を描き出した。
全体的に、各報告について活発な質疑応答がなされ、最終討論やその後のWEHCでのセッションでのフィードバックも合わせて、今後の研究発展に向けて、大きな一歩を踏み出すことができた。
以上の諸報告については、会議で討論しあったことを反映させ、来年e-Bookの論文集として刊行予定である。出版の詳細や今後の活動についてはhttp://lccg.tokyoをご覧いただきたい。個別のペーパーを閲覧希望の方はinfo@lccg.tokyoまでご連絡いただきたい。

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